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2007年5月 2日

ナンシー

後ろめたさが
あるのかないのか
はっきりしないけれど

僕は
改装中のビルから
ツーンと鼻を突き刺す
透明な液体を

子どものころから
自分の中で

「ナンシー」

と勝手に呼んでいる。

今まで
誰にも打ち明けたことのない
どーでもいい秘密なんですけど(笑)




今はとんとご無沙汰だったけど

その昔
ナンシーは
とても身近な存在だった。

親父が
ちょくちょく
連れて帰って来ていたからだ。

ナンシーを連れて帰った日は
風呂に入るタイミングが
いつにも増して速かった。

そして
風呂上がりのビールを
咽に注ぎ込むスピードも……
ほぼジョッキ一気だった。

そんな日に限って
お袋は
とても誇らしい表情で
晩飯の段取りをしていた。





僕の親父は
家のカーテンや壁紙を
注文に応じて拵える
現役の職人だ。

ナンシーを
連れて帰る回数が
多いってことは

それだけ
親父が現場に出ているという
証だった訳で……





あの頃の僕は

「スーツなんて嫌いだっ!」

って強がっていた。

ナンシーを連れて帰るときの
ボロボロだけど
誇らしげな
親父の作業着姿ばかり見ていたから

親戚が集まった時に
気恥ずかしそうに
一張羅のスーツを来ている親父が
とても恥ずかしかった。

僕もスーツを着ない
仕事がしたい……

漠然とした
目標だけがあった気がする。





結局
僕は今スーツを着て
仕事をずっとしている……

この春
事務所がかわった。

GWを利用して
急ピッチで改装が進むビルの中に
僕も休日を返上して
いちゃったりする。

引っ越しを甘く見ていたせいか
荷物の整理やらなんやらで
職人さん達よりも
体を動かしている。

相変わらず
計画性のなさは
天性のものだと
我ながら感心してしまう。





ため息をつきながら
指をおっていたら
スーツを着る仕事に就いて
もう7年近くになることに
気がついた。

どこでボタンを掛け違えたのか……

考えるのが
面倒くさくなっているのかも(笑)

色んな意味で
釈然としない自分の身の振り方に

また
ため息をつく。

その反動で
深く息を吸ってしまい
せき込んでしまった。

過度にシンナーを吸うのは
やっぱりいけないことでなのですね(笑)

今更気づくなって……(涙)

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コメント

丹生谷歩美 さん>

作業着はいいですよね(笑)

全身で仕事しているという
オーラがしてカッコいいんです……

使い込んでいくと
より渋く見えるんです……

スーツはどうも……
ヘタってしまうとアカンですね

でも
傍目で見ているからなのかもしれません……

今は
四の五の言わずに
スーツで頑張らねばという感じです(笑)

投稿: 宇津つよし | 2007年5月 4日 01:52

かっこいいお父さんですね。わたしの父も、スーツの仕事ではなく、大きいワッパ(ハンドル)を握る仕事でした。子供の頃は、スーツの仕事のほうがかっこいいのに……と思ってたけど、年齢を重ねるほどに作業着の仕事のかっこよさ、たくましさを誇らしく感じるようになりました。父がハンドルのことを「ワッパ」と呼ぶたびに、なんだかしびれてしまいます。

投稿: 丹生谷歩美 | 2007年5月 3日 01:23

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