ナンシー
後ろめたさが
あるのかないのか
はっきりしないけれど
僕は
改装中のビルから
ツーンと鼻を突き刺す
透明な液体を
子どものころから
自分の中で
「ナンシー」
と勝手に呼んでいる。
今まで
誰にも打ち明けたことのない
どーでもいい秘密なんですけど(笑)
※
今はとんとご無沙汰だったけど
その昔
ナンシーは
とても身近な存在だった。
親父が
ちょくちょく
連れて帰って来ていたからだ。
ナンシーを連れて帰った日は
風呂に入るタイミングが
いつにも増して速かった。
そして
風呂上がりのビールを
咽に注ぎ込むスピードも……
ほぼジョッキ一気だった。
そんな日に限って
お袋は
とても誇らしい表情で
晩飯の段取りをしていた。
※
僕の親父は
家のカーテンや壁紙を
注文に応じて拵える
現役の職人だ。
ナンシーを
連れて帰る回数が
多いってことは
それだけ
親父が現場に出ているという
証だった訳で……
※
あの頃の僕は
「スーツなんて嫌いだっ!」
って強がっていた。
ナンシーを連れて帰るときの
ボロボロだけど
誇らしげな
親父の作業着姿ばかり見ていたから
親戚が集まった時に
気恥ずかしそうに
一張羅のスーツを来ている親父が
とても恥ずかしかった。
僕もスーツを着ない
仕事がしたい……
漠然とした
目標だけがあった気がする。
※
結局
僕は今スーツを着て
仕事をずっとしている……
この春
事務所がかわった。
GWを利用して
急ピッチで改装が進むビルの中に
僕も休日を返上して
いちゃったりする。
引っ越しを甘く見ていたせいか
荷物の整理やらなんやらで
職人さん達よりも
体を動かしている。
相変わらず
計画性のなさは
天性のものだと
我ながら感心してしまう。
※
ため息をつきながら
指をおっていたら
スーツを着る仕事に就いて
もう7年近くになることに
気がついた。
どこでボタンを掛け違えたのか……
考えるのが
面倒くさくなっているのかも(笑)
色んな意味で
釈然としない自分の身の振り方に
また
ため息をつく。
その反動で
深く息を吸ってしまい
せき込んでしまった。
過度にシンナーを吸うのは
やっぱりいけないことでなのですね(笑)
今更気づくなって……(涙)
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コメント
丹生谷歩美 さん>
作業着はいいですよね(笑)
全身で仕事しているという
オーラがしてカッコいいんです……
使い込んでいくと
より渋く見えるんです……
スーツはどうも……
ヘタってしまうとアカンですね
でも
傍目で見ているからなのかもしれません……
今は
四の五の言わずに
スーツで頑張らねばという感じです(笑)
投稿: 宇津つよし | 2007年5月 4日 01:52
かっこいいお父さんですね。わたしの父も、スーツの仕事ではなく、大きいワッパ(ハンドル)を握る仕事でした。子供の頃は、スーツの仕事のほうがかっこいいのに……と思ってたけど、年齢を重ねるほどに作業着の仕事のかっこよさ、たくましさを誇らしく感じるようになりました。父がハンドルのことを「ワッパ」と呼ぶたびに、なんだかしびれてしまいます。
投稿: 丹生谷歩美 | 2007年5月 3日 01:23